相似とは何か?基本概念をしっかり理解しよう
相似問題を解くためには、まず「相似」という概念をしっかりと理解することが大切です。相似は中学数学の図形分野で重要な単元であり、高校数学の基礎にもなります。ここでは、相似の定義から具体的な見つけ方まで、分かりやすく解説していきます。
相似の定義と条件
相似とは、形が同じで大きさが異なる図形の関係を表す言葉です。身近な例で言えば、写真を拡大したり縮小したりしても形は変わらないことと同じです。
数学的には、2つの図形が相似であるためには以下の条件を満たす必要があります。
- 対応する角がすべて等しい
- 対応する辺の比がすべて等しい
この2つの条件が揃って初めて、2つの図形は相似であると言えます。特に重要なのは、対応する辺の比が一定であることです。この比を「相似比」と呼びます。
例えば、三角形ABCと三角形DEFが相似の場合、AB:DE = BC:EF = CA:FD となります。この比が相似比で、すべての対応する辺でこの比が同じになるのが相似の特徴です。
相似を理解する上で大切なのは、拡大や縮小をしても角度は変わらないということです。つまり、形が同じであれば、大きさに関係なく角度は保たれます。この性質を利用して、相似問題では角度の情報を活用することが多くあります。
相似記号の使い方と表記方法
相似を表す記号は「∽」です。この記号を使って、三角形ABCと三角形DEFが相似であることを「△ABC ∽ △DEF」と表記します。
相似記号を使う際の注意点は、対応する頂点の順序を正しく書くことです。例えば、△ABC ∽ △DEFと書いた場合、AとD、BとE、CとFがそれぞれ対応していることを意味します。
対応関係を正しく把握することで、以下のことが分かります。
- ∠A = ∠D、∠B = ∠E、∠C = ∠F
- AB:DE = BC:EF = CA:FD
この対応関係を間違えると、問題の解答が間違ってしまうため、相似記号を書く際は必ず対応する頂点の順序を確認しましょう。
実際の問題では、図形を見て対応する頂点を見つけることが重要です。角度が等しい頂点や、図形の位置関係から対応を判断します。慣れるまでは、対応する頂点に同じ色を付けたり、対応関係を書き出したりすると分かりやすくなります。
相似比の計算方法
相似比は、対応する辺の長さの比のことです。例えば、△ABCと△DEFが相似で、AB = 6cm、DE = 3cmの場合、相似比は6:3 = 2:1となります。
相似比を求める手順は以下の通りです。
- 対応する辺を正しく見つける
- 辺の長さの比を計算する
- 比を最も簡単な形に約分する
相似比が分かれば、他の対応する辺の長さも計算できます。例えば、上記の例で相似比が2:1であり、BC = 8cmの場合、対応するEFの長さは8 ÷ 2 = 4cmとなります。
相似比の活用方法として、面積比や体積比を求めることもできます。相似比がm:nの場合、面積比はm²:n²、体積比はm³:n³となります。これらの関係も相似問題でよく出題されるポイントです。
合同と相似の違い
合同と相似は似ている概念ですが、重要な違いがあります。合同は形も大きさも同じ図形の関係を表し、相似は形が同じで大きさが異なる可能性がある図形の関係を表します。
合同の場合:
- 対応する辺の長さがすべて等しい
- 対応する角がすべて等しい
- 記号は「≡」を使用
相似の場合:
- 対応する辺の比がすべて等しい
- 対応する角がすべて等しい
- 記号は「∽」を使用
つまり、合同は相似の特別な場合(相似比が1:1の場合)と考えることができます。合同な図形は必ず相似ですが、相似な図形が必ず合同とは限りません。
問題を解く際は、まず図形が合同なのか相似なのかを判断することが大切です。合同の場合は辺の長さが等しいことを利用し、相似の場合は辺の比が等しいことを利用します。
三角形の相似条件を覚えよう
三角形の相似を判定するための条件は3つあります。これらの条件を覚えることで、効率的に相似問題を解くことができます。各条件には特徴があり、問題によって使い分けることが重要です。
角角(AA)の相似条件
角角(AA)の相似条件は、2つの角が等しければ三角形が相似であると判定する条件です。三角形の内角の和は180°なので、2つの角が等しければ、残りの1つの角も自動的に等しくなります。
この条件を使う場面:
- 角度の情報が多く与えられている問題
- 平行線の性質を利用した問題
- 円に内接する図形の問題
例えば、△ABCと△DEFにおいて、∠A = ∠D = 60°、∠B = ∠E = 80°の場合、残りの角∠C = ∠F = 40°となり、AAの条件により△ABC ∽ △DEFが成り立ちます。
平行線を利用した相似問題では、AAの条件がよく使われます。平行線の性質により、錯角や同位角が等しくなることを利用して、角度の等しさを見つけることができます。
実際の問題では、与えられた角度の情報だけでなく、図形の性質から角度を求めることも必要です。例えば、二等辺三角形の底角が等しいことや、直角三角形で90°の角があることなどを活用します。
辺辺辺(SSS)の相似条件
辺辺辺(SSS)の相似条件は、3つの辺の比がすべて等しければ三角形が相似であると判定する条件です。この条件を使う場合は、すべての辺の長さが分かっている必要があります。
判定の手順:
- 対応する辺を正しく見つける
- 3つの辺の比を計算する
- すべての比が等しいかを確認する
例えば、△ABCでAB = 6、BC = 8、CA = 10、△DEFでDE = 3、EF = 4、FD = 5の場合、AB:DE = 6:3 = 2:1、BC:EF = 8:4 = 2:1、CA:FD = 10:5 = 2:1となり、すべての比が等しいため相似です。
注意点として、対応する辺を正しく見つけることが重要です。辺の長さだけでなく、図形の形状や角度の情報も参考にして、正しい対応関係を見つけましょう。
SSSの条件は、辺の長さの情報が豊富な問題で特に有効です。測量や建築などの実際の応用問題でもよく使われる条件です。
辺角辺(SAS)の相似条件
辺角辺(SAS)の相似条件は、2つの辺の比が等しく、その間の角が等しければ三角形が相似であると判定する条件です。「間の角」という部分が重要なポイントです。
使用する際の注意点:
- 比を求める2辺の間にある角であること
- 角度は対応する角であること
- 辺の比は正しく計算されていること
例えば、△ABCと△DEFにおいて、AB:DE = AC:DF = 2:1で、∠A = ∠D = 70°の場合、SASの条件により△ABC ∽ △DEFが成り立ちます。
間違いやすいポイントとして、角度が2辺の間にない場合があります。例えば、AB:DE = BC:EF = 2:1で∠C = ∠F = 50°の場合、∠Cは辺ABと辺BCの間の角ではないため、SASの条件は適用できません。
SASの条件は、角度の情報が限られている場合に特に有効です。実際の問題では、図形の性質や定理を使って角度を求めることも必要になります。
相似条件の使い分け
問題を解く際は、与えられた情報に応じて適切な相似条件を選択することが大切です。以下のような判断基準を参考にしてください。
情報の種類別使い分け:
| 与えられた情報 | 使用する条件 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 角度が2つ以上 | AA | 平行線の性質も活用 |
| 辺の長さが3つ | SSS | 対応関係を正確に |
| 辺2つ+間の角 | SAS | 角が2辺の間にあるか確認 |
効率的な解法のコツは、最も情報が揃っている条件を優先することです。例えば、角度の情報が多い場合はAAを、辺の情報が多い場合はSSSを検討しましょう。
また、複数の条件を組み合わせることも重要です。一つの条件だけでは判定できない場合でも、他の条件と組み合わせることで相似を証明できることがあります。
問題練習では、様々なパターンの問題を解いて、条件の使い分けに慣れることが大切です。最初は時間をかけても良いので、正確な判断力を身につけましょう。
相似問題の基本的な解法パターン
相似問題には典型的な解法パターンがあります。これらのパターンを理解し、練習することで、様々な相似問題に対応できるようになります。ここでは、最も重要な解法パターンを具体的に説明します。
辺の長さを求める問題
相似問題で最も基本的なのが、辺の長さを求める問題です。相似比を利用して未知の辺の長さを計算します。
解法の基本手順:
- 相似な図形を見つける
- 対応する辺を確認する
- 相似比を計算する
- 比例式を立てて解く
例題:△ABCと△DEFが相似で、AB = 6cm、DE = 4cm、BC = 9cmの場合、EFの長さを求める。
解法:
相似比は AB:DE = 6:4 = 3:2
対応する辺の比も同じなので、BC:EF = 3:2
9:EF = 3:2
3 × EF = 9 × 2 = 18
EF = 6cm
計算のコツとして、比例式を使うことが重要です。「内項の積 = 外項の積」の関係を利用して、未知の値を求めます。
また、単位の統一も忘れずに行いましょう。問題によっては、cmとmが混在している場合があります。計算前に単位を統一することで、ミスを防ぐことができます。
角度を求める問題
相似な図形では対応する角が等しいという性質を利用して、角度を求める問題も頻出です。
解法のポイント:
- 対応する角を正しく見つける
- 三角形の内角の和(180°)を利用する
- 図形の性質(二等辺三角形、直角三角形など)を活用する
例題:△ABCと△DEFが相似で、∠A = 50°、∠B = 70°、∠E = 70°の場合、∠F の大きさを求める。
解法:
△ABCで∠C = 180° – 50° – 70° = 60°
相似な図形では対応する角が等しいため、∠F = ∠C = 60°
角度問題の注意点として、対応関係を間違えないことが重要です。相似記号の書き方や図形の位置関係から、正しい対応を見つけましょう。
面積比を求める問題
相似な図形の面積比は相似比の2乗になります。この性質を利用して面積比を求める問題も重要です。
基本公式:
相似比が m:n の場合、面積比は m²:n²
例題:△ABCと△DEFが相似で、相似比が3:2の場合、面積比を求める。
解法:
相似比が3:2なので、面積比は3²:2² = 9:4
具体的な面積値が与えられている場合の計算方法:
△ABCの面積が36cm²で、相似比が3:2の場合、△DEFの面積は
36 × (2/3)² = 36 × 4/9 = 16cm²
面積比の問題では、2乗の計算を忘れないことが重要です。相似比をそのまま使ってしまうミスが多いため、注意しましょう。
体積比を求める問題
立体図形の相似では、体積比は相似比の3乗になります。
基本公式:
相似比が m:n の場合、体積比は m³:n³
例題:相似な2つの円錐で、相似比が2:3の場合、体積比を求める。
解法:
相似比が2:3なので、体積比は2³:3³ = 8:27
実際の体積値から相似比を求める逆算問題も出題されます。
例:体積比が27:8の場合、相似比は∛27:∛8 = 3:2
体積比の問題では、3乗の計算と立方根の計算の両方が必要になることがあります。基本的な立方数(1³=1, 2³=8, 3³=27, 4³=64など)は覚えておくと便利です。
平行線を利用した相似問題
平行線の性質を利用した相似問題は、中学数学の相似分野で最も重要な単元の一つです。平行線の性質と相似の関係を理解することで、多くの問題を効率的に解くことができます。
平行線の性質の復習
相似問題を解く前に、平行線の性質をしっかりと復習しておきましょう。これらの性質は相似問題で頻繁に使用されます。
基本的な平行線の性質:
- 同位角:平行線と横断線が作る角で、同じ位置にある角は等しい
- 錯角:平行線と横断線が作る角で、ジグザグの位置にある角は等しい
- 内角:平行線と横断線が作る角で、内側にある角の和は180°
これらの性質を利用することで、図形内の角度関係を見つけることができます。特に、同位角と錯角が等しいという性質は、相似問題で角度の等しさを証明する際に重要な役割を果たします。
実際の問題では、平行線が明示されている場合もあれば、条件から平行線を見つける必要がある場合もあります。平行線の記号(∥)や、問題文での表現に注意して読み取りましょう。
三角形と平行線の基本パターン
三角形の一辺に平行な直線を引いた場合、元の三角形と新しくできる三角形が相似になります。これは相似問題の最も基本的なパターンです。
基本的な定理:
△ABCで、辺BCに平行な直線が辺ABを点D、辺ACを点Eで分けるとき、△ADE ∽ △ABC
このときの相似比は AD:AB = AE:AC = DE:BC となります。
具体的な例:
△ABCで、DE∥BCの場合
AD = 4cm, DB = 2cm, AE = 6cm のとき
AB = AD + DB = 4 + 2 = 6cm
相似比は AD:AB = 4:6 = 2:3
よって AE:AC = 2:3 から 6:AC = 2:3
AC = 9cm, EC = AC – AE = 9 – 6 = 3cm
この基本パターンを理解することで、より複雑な相似問題も解けるようになります。
比例線分の性質
平行線と相似の関係では、比例線分の性質が重要な役割を果たします。この性質を理解することで、辺の長さを効率的に求めることができます。
基本的な比例線分の性質:
△ABCで DE∥BC の場合、AD:DB = AE:EC が成り立つ
これを内分比と呼びます。点Dが線分ABを内分する比と、点Eが線分ACを内分する比が等しくなります。
計算例:
AD:DB = 2:3, AE = 8cm の場合のEC の求め方
AD:DB = AE:EC = 2:3 から
8:EC = 2:3
EC = 8 × 3 ÷ 2 = 12cm
外分比の場合も同様の関係が成り立ちます。直線DEを延長してBCと交わる場合、外分比も等しくなります。
比例線分の性質は、連比の形で表現されることもあります。AD:DB:AB = AE:EC:AC = DE:BC のような形で、複数の比を同時に表現できます。
平行線と相似の応用問題
平行線を利用した相似問題では、複数の相似な図形が同時に現れることがあります。これらの問題では、段階的に解いていくことが重要です。
台形の問題:
台形ABCDで AB∥DC、対角線AC、BDの交点をOとする場合
△AOB ∽ △COD が成り立ちます。
この相似関係を利用して、線分の長さや面積を求めることができます。
解法のコツ:
- 平行線を見つける
- 相似な三角形を特定する
- 対応する辺や角を確認する
- 比例関係を利用して計算する
複雑な図形の場合は、補助線を引くことも効果的です。例えば、四角形の対角線を引いて三角形に分割したり、平行線を延長して交点を作ったりすることで、相似な図形を見つけやすくなります。
実際の問題では、図形の性質を総合的に活用することが重要です。平行線の性質だけでなく、三角形の性質、四角形の性質、円の性質などを組み合わせて解いていきます。
実際の入試問題で学ぶ相似問題
入試問題では、基本的な相似問題から応用問題まで幅広く出題されます。ここでは、実際の入試問題のパターンを分析し、効果的な解法を身につけていきます。
基本レベルの入試問題
基本レベルの相似問題は、相似条件の判定や簡単な計算が中心です。まずは確実に得点できるよう、基本パターンを完璧にしましょう。
典型的な出題パターン:
- 相似な図形の判定
- 相似比を使った辺の長さの計算
- 角度の計算
- 面積比の計算
例題タイプ:
「△ABCで、D、Eはそれぞれ辺AB、AC上の点で、DE∥BCである。AD = 4cm、DB = 2cm、BC = 9cmのとき、DEの長さを求めよ。」
解法:
DE∥BCなので、△ADE ∽ △ABC
相似比は AD:AB = 4:(4+2) = 4:6 = 2:3
よって DE:BC = 2:3
DE:9 = 2:3
DE = 6cm
基本問題で気をつけるポイント:
- 計算ミスを防ぐため、途中式を丁寧に書く
- 対応する辺や角を正しく見つける
- 単位を統一する
- 答えの妥当性を確認する
基本問題は確実に得点する必要があります。計算練習を重ねて、ミスを減らしましょう。
応用レベルの入試問題
応用レベルでは、複数の図形が組み合わさった問題や、複雑な計算が必要な問題が出題されます。
応用問題の特徴:
- 複数の相似な図形が同時に現れる
- 座標平面上での相似問題
- 立体図形の相似
- 証明問題と計算問題の融合
複合図形の例:
「四角形ABCDで、AB∥DC、対角線AC、BDの交点をOとする。AO:OC = 3:2、BO = 6cmのとき、ODの長さを求めよ。」
解法:
AB∥DC なので、△AOB ∽ △COD
相似比は AO:OC = 3:2
よって BO:OD = 3:2
6:OD = 3:2
OD = 4cm
立体図形の相似では、相似比から体積比を求める問題がよく出題されます。
「相似な2つの円錐で、底面の半径の比が2:3のとき、体積比を求めよ。」
解法:
相似比が2:3なので、体積比は2³:3³ = 8:27
応用問題では、段階的な解法が重要です。複雑な問題も基本的な相似の性質を組み合わせて解けます。
証明問題への対応
相似の証明問題は、論理的な思考力が問われる重要な問題タイプです。証明の書き方にはルールがあり、正しい形式で書く必要があります。
証明の基本的な流れ:
- 証明したい相似関係を明確にする
- 使用する相似条件を決める
- 条件を満たすことを段階的に示す
- 結論を述べる
証明の例:
「△ABCで、D、Eはそれぞれ辺AB、AC上の点で、DE∥BCである。△ADE ∽ △ABCを証明せよ。」
証明:
△ADEと△ABCにおいて
DE∥BCなので、同位角により∠ADE = ∠ABC
DE∥BCなので、同位角により∠AED = ∠ACB
∠A は共通
よって、3つの角が等しいので
△ADE ∽ △ABC
証明問題のポイント:
- 使用する定理や性質を明確に述べる
- 論理的な順序で記述する
- 省略せずに丁寧に書く
- 結論を明確に述べる
証明問題は、理解度の確認という意味でも重要です。相似の本質を理解していなければ、正しい証明はできません。
難関校対策
難関校では、創意工夫が必要な問題や、複数の単元を組み合わせた問題が出題されます。
難関校の出題傾向:
- 補助線を引く必要がある問題
- 座標平面と図形の融合問題
- 関数のグラフと相似の関係
- 円と相似の複合問題
補助線を使った問題:
複雑な図形でも、適切な補助線を引くことで相似な図形を見つけることができます。
補助線のヒント:
- 平行線を引いて相似を作る
- 対角線を引いて図形を分割する
- 円の中心と点を結ぶ
- 垂線を引いて直角三角形を作る
座標平面での相似:
座標を使って辺の長さを求め、相似比を計算する問題も出題されます。
解法のコツ:
- 座標から距離を求める公式を活用
- 傾きを使って平行線を見つける
- 相似変換の性質を利用する
難関校対策では、基本の完璧な理解と応用力の養成の両方が必要です。多くの問題パターンに触れて、解法の引き出しを増やしましょう。
相似問題でよくある間違いと対策
相似問題を解く際に、多くの中学生が陥りやすい間違いがあります。これらの間違いを理解し、対策することで、正答率を大幅に向上させることができます。
対応関係の間違い
対応関係の間違いは、相似問題で最も多いミスの一つです。対応する辺や角を間違えると、その後の計算がすべて間違ってしまいます。
よくある間違いパターン:
- 図形の向きが違うため、対応を間違える
- 相似記号の順序を間違える
- 辺の名前を勘違いする
- 角度の対応を間違える
対策方法:
- 図形に色を付けて対応関係を明確にする
- 対応する頂点を線で結んで確認する
- 相似記号を書く前に対応を確認する
- 角度や辺の長さで対応を確認する
具体的な確認方法:
△ABCと△DEFが相似の場合、以下のように確認します。
- 最も長い辺同士が対応しているか
- 最も大きい角同士が対応しているか
- 図形の形状を比較して対応を判断する
例えば、△ABCで∠A = 90°、△DEFで∠D = 90°の場合、AとDが対応する可能性が高いです。このように、特徴的な角度や辺を手がかりにして対応関係を見つけましょう。
練習問題を解く際は、必ず対応関係を書き出してから計算を始める習慣をつけることが大切です。最初は時間がかかっても、正確性を重視しましょう。
相似比の計算ミス
相似比の計算ミスも非常に多い間違いです。特に、分数や小数が含まれる場合や、単位が異なる場合にミスが起こりやすくなります。
よくある計算ミス:
- 比の順序を逆にする
- 約分を忘れる
- 単位を統一しない
- 小数と分数を混同する
正しい計算手順:
- 対応する辺の長さを確認する
- 単位を統一する
- 比を計算する
- 最も簡単な形に約分する
- 他の辺でも同じ比になるか確認する
例:
AB = 1.5cm、DE = 0.5cmの場合
相似比は1.5:0.5 = 15:5 = 3:1(最も簡単な形)
単位換算が必要な場合:
AB = 12mm、DE = 1.8cmの場合
まず単位を統一:DE = 18mm
相似比は12:18 = 2:3
計算練習では、検算を必ず行うことが重要です。他の対応する辺でも同じ比になることを確認しましょう。
面積比と体積比の混同
相似比、面積比、体積比の関係を混同するミスも頻繁に見られます。それぞれの関係を正しく理解することが重要です。
正しい関係:
- 相似比が m:n の場合
- 面積比は m²:n²
- 体積比は m³:n³
よくある間違い:
- 面積比を相似比と同じにする
- 体積比を面積比と同じにする
- 2乗、3乗の計算を忘れる
- 逆算の際に平方根、立方根を使わない
覚え方のコツ:
- 長さ(1次元)→ 相似比そのまま
- 面積(2次元)→ 相似比の2乗
- 体積(3次元)→ 相似比の3乗
練習例:
相似比が2:3の場合
- 辺の比:2:3
- 面積比:2²:3² = 4:9
- 体積比:2³:3³ = 8:27
この関係を確実に覚えて、問題に応じて正しく使い分けましょう。
証明問題での論理の飛躍
証明問題では、論理の飛躍や根拠の不明確さがよく見られる間違いです。
よくある論理の飛躍:
- 定理を使った根拠を示さない
- 途中の手順を省略する
- 結論を先に述べてしまう
- 条件を確認せずに相似と判断する
正しい証明の書き方:
- 証明したい内容を明確にする
- 使用する定理や性質を明記する
- 段階的に論理を積み重ねる
- 各段階で根拠を示す
- 結論を明確に述べる
証明の例(正しい書き方):
証明:△ADE ∽ △ABC であることを証明する
△ADEと△ABCにおいて
仮定より DE∥BC
同位角により ∠ADE = ∠ABC
同位角により ∠AED = ∠ACB
∠A は共通角
よって、AA の相似条件により △ADE ∽ △ABC
避けるべき書き方:
「DE∥BC なので △ADE ∽ △ABC」
(根拠が不十分で論理が飛躍している)
証明問題では、読み手が理解できるように丁寧に書くことが重要です。
まとめ:相似問題を確実に解くためのポイント
相似問題を確実に解くためには、基本概念の理解から応用問題への対応まで、段階的にスキルを身につけることが重要です。最後に、学習のポイントをまとめておきます。
基本概念の確実な理解
相似の定義を正確に理解することが、すべての相似問題を解く基礎となります。
押さえるべき基本事項:
- 相似とは形が同じで大きさが異なる図形の関係
- 対応する角がすべて等しい
- 対応する辺の比がすべて等しい
- 相似比は対応する辺の長さの比
三角形の相似条件も確実に覚えましょう:
- AA(角角):2つの角が等しい
- SSS(辺辺辺):3つの辺の比がすべて等しい
- SAS(辺角辺):2つの辺の比が等しく、間の角が等しい
これらの基本事項は、暗記ではなく理解することが大切です。なぜそうなるのかを考えながら学習しましょう。
計算力の向上
相似問題では、正確な計算力が不可欠です。特に以下の計算は繰り返し練習しましょう。
重要な計算技能:
- 比の計算と約分
- 比例式の解法
- 面積比・体積比の計算
- 平方根・立方根の計算
計算ミスを減らすコツ:
- 途中式を省略せずに書く
- 検算を必ず行う
- 単位を統一してから計算する
- 答えの妥当性を確認する
計算練習は、毎日少しずつ続けることが効果的です。基本的な計算が自動的にできるようになると、問題の本質的な部分に集中できます。
図形の性質の活用
相似問題では、図形の性質を総合的に活用する必要があります。
活用すべき図形の性質:
- 平行線の性質(同位角、錯角)
- 三角形の性質(内角の和、二等辺三角形など)
- 四角形の性質(台形、平行四边形など)
- 円の性質(中心角、円周角など)
これらの性質は、相似条件を確認したり、角度を求めたりする際に必要になります。各性質を使う場面を理解して、適切に活用できるようになりましょう。
問題演習のポイント
効果的な問題演習のために、以下のポイントを意識しましょう。
段階的な学習:
- 基本問題で概念を確認
- 標準問題で解法パターンを身につける
- 応用問題で思考力を鍛える
- 入試問題で実戦力を養う
間違い直しの重要性:
- 間違えた問題は必ず解き直す
- 間違いの原因を分析する
- 同じ間違いを繰り返さない工夫をする
- 理解が不十分な箇所は基本に戻る
時間配分の練習:
入試では限られた時間で問題を解く必要があります。普段から時間を意識した練習を行い、効率的な解法を身につけましょう。
相似問題は、継続的な学習によって確実に力がつく分野です。基本を大切にしながら、段階的にレベルアップしていけば、必ず得意分野にできます。焦らずに着実に学習を進めていきましょう。
相似は高校数学でも重要な概念として登場します。中学校で学ぶ相似の知識は、将来の数学学習の基礎となる非常に重要なものです。今のうちにしっかりと基礎を固めて、数学の力を伸ばしていきましょう。
